以下は、システム開発におけるノウハウをまとめたものである。

目次

  1. 視野角の狭いHMDを使用する場合
  2. 支援情報をディスプレイ上に表示する場合
  3. 両手を使用する作業を行う場合
  4. 動画やアニメーションを使用する場合
  5. コマンド操作を行う場合
  6. サブタスク:オブジェクトの設置を扱う場合

    1.視野角の狭いHMDを使用する場合

多くのHMDのCG表示可能領域は、使用する人間の視野角よりも狭く出来ている。そのため、開発画面中に作業者が見えると想定するCGの表示範囲であっても、実際のHMDを通して見ることの出来るCG表示可能範囲よりも狭い可能性があり、実際にシステムの試運転で確認すると良い。

例:青色ブロック(2×4)と青色ブロック(2×2)を選択する場合の開発画面

例:実際にシステムを利用して、青色ブロック(2×4)と青色ブロック(2×2)を選択する場合のHMDの表示画面イメージ
(赤枠はCG表示可能範囲を示す。)

上記の通り、開発中にはCGオブジェクト全体が視野内に収ると想定しても、実際のHMDを通して見ると映らないオブジェクトが発生する。
視野に入れて欲しいオブジェクトがHMDのCG表示可能範囲の外に出る場合に以下の視線誘導方法を用いると良い。

・オブジェクトの場所を示す矢印等を表示。

・オブジェクトの場所を示す集中線を表示。

・オブジェクトの場所を示す小さなマップ(地図)を表示。

・視線の移動を示すテキストを表示。


2.支援情報をディスプレイ上に表示する場合

テキストやオブジェクトなどのCG等の支援情報を表示する形式は以下の3種類がある。

①HMD座標系固定型:HMDに固定する形で支援情報を表示する形式。

例:ユーザの頭の位置・姿勢が変化しても、「①HMD」というテキストがディスプレイ上の同じ場所に表示される。

②オブジェクト座標系固定型:オブジェクトに固定する形で支援情報を表示する形式。

例:ブロックの位置・姿勢が変化すると、「②Object」というテキストの位置・姿勢も同様に変化し、表示される。

③世界座標系固定型:世界座標系に固定する形で支援情報を表示する形式。

例:ユーザの頭やオブジェクトの位置・姿勢の変化に関係なく、「③World」というテキストが実空間上の同じ場所に表示される。

①の形式を使用する場合に注意しなければならない問題

両目に対応した2つのディスプレイを持つHMDにおいて、下図に示すように、眼から部品と支援情報の奥行き距離に大きな差が生じることが多い。そして、両眼の回転運動による輻輳角の関係上、一度に2 つ以上の異なる奥行きの位置に両目の焦点を合わせることができず、交互にその焦点を調節し見比べる必要があるが、両眼の焦点調節は瞬時に行うことができず、大抵は支援情報が二重に見えてしまうという問題が生じた。

これに対し、片目表示のみに変更するとで、両眼の焦点調節の必要がなくなり、部品と支援情報の両方を交互に見やすくなったという事例がある。

また、片目の不足している視野は人のは両眼による視野の補完能力によって補われるため、変わらず見ることができる。

例:眼前に部品、その手前に支援情報が表示される場合における両眼の輻輳角を示す図

②③の形式において画像を表示する場合

周囲に似た部品が複数ある場合には、表示する画像は原寸大表示が良い。

作業中、複数の似た部品の中から、表示された画像の部品を探す場合、通常であれば、画像の見た目のみの情報比較により探すことになる。ここで、原寸大の部品画像を用いることで、見た目情報に加え、見た目の大きさ情報を利用して比較でき、容易に探すことが可能になる。 例:画像で示されたコネクタを選択する(左図:単に画像を表示、右図:原寸大に調整し画像を表示)

3.両手を使用する作業を行う場合

両手を占有してしまうタスクの場合、音声操作を用いると良い。
以下に、音声操作に最低限必要となるコマンドを挙げる。

・次の手順へ進む

・前の手順へ戻る

・最初の手順へ戻る

・メニューを開く

例:「Next」・「Back」・「Reset」の音声コマンド操作

音声操作を用いる場合は使用出来るコマンドを常時ディスプレイに表示しておくと良い。(コマンド操作についてはコマンド操作を行う場合へ)


4.動画やアニメーションを使用する場合

動画やアニメーションを用いて作業手順を示す場合に、専用の操作コマンドを用意すると良い。(コマンド操作についてはコマンド操作を行う場合へ)
以下に、操作に最低限必要となるコマンドを挙げる。

・一時停止

・再生

・最初から再生

例:ネジをPC筐体に取り付ける作業における音声で動画を操作

また、以下に、表示する動画やアニメーションの工夫についても紹介する。

  • 動画やアニメーションを作業者が何度も確認可能にするために、ループ再生する機能を付けると良い。
  • 最終状態の確認を容易にするために、動画の終わりには少しの間、その最終状態を示す映像で静止させる等の余韻を持たせると良い。
  • 細かい作業を動画やアニメーションで表す場合には、注目して欲しい場所に対しアップしたものを用いると良い。


5.コマンド操作を行う場合

音声やジェスチャー等を用いてコマンド操作を行う場合には、コマンド一覧を、HMDのディスプレイにHMD座標系固定型、もしくは、世界座標系固定型で常時表示しておくと良い。

ただし、使用出来ないコマンドについては、文字を薄くするなど色の変更して表示する。または、表示しないといった工夫があると良い。

また、使用出来るコマンドであっても頻度が多いものについては、常時表示。頻度の少ないものについては、まとめてメニューとして隠してしまう方法もある。

コマンド操作を行った直後は、一覧表示しているコマンドの内、該当コマンドの色を変化させる等、利用者に対して操作済を知らせる様なフィードバックを与える仕組みが必要となる。


6.サブタスク:オブジェクトの設置を扱う場合

サブタスクの種類の中の「オブジェクトの設置」において3DCGアニメーションを用いて作業効率向上を図る場合に、以下の様な方法がある。

・オブジェクトの最終的な設置位置を「ワイヤーフレーム」で明確化する

例:黄色のブロック(2×4)を土台の指定位置に設置する

・簡単な設置方法であれば、アニメーションは使用せず、オブジェクトの最終位置を示す3Dモデルのみを表示する

例:緑色のブロック(2×6)に黄色のブロック(2×4)を設置する

また、「オブジェクトの設置」においてオブジェクトの位置・姿勢をテキストで表現する場合、そのオブジェクトの絶対位置・姿勢ではなく、近くのオブジェクトとの相対位置・姿勢で表現する方がわかりやすいことがある。 例:緑色の土台の左端から9マス、下端から9マス空けて青色ブロック(2×2)を設置する場合、
近くの青色ブロック(2×4)のブロックを基準として提示した方がわかりやすい。